暮らしに役立つ法律用語 第3回 住宅ローンの実情(1)

住宅ローン審査の概要

 住宅ローンは、銀行等の金融機関とのお付き合いがない方でも、一生に一度は借りる可能性があります。金融機関にとっても、住宅ローンは比較的延滞が少なく、一定の回収も見込めるので、安全・確実な商品ということができます。それでは、住宅ローンの申し込みに対して、金融機関はどのような審査を行うのでしょうか?

 住宅ローンの審査は大きく分けて、債務者の支払能力と、不動産(取得する住宅)の担保価値の観点から行われますが、いずれも事業性資金などの審査の場合と異なって定型的な審査が行われます。
まず支払能力ですが、これは借りる方の年間可処分所得から算出されます。つまり年収から税金、社会保険料等を差し引いた手取所得を基準として、例えば手取り500万円までは30%、それを超える分は40%が返済可能額、というように算定しますが、具体的な掛け目とか、掛け目が変動する手取額の線引きとかは金融機関によって異なります。
後者は、担保不動産の簡易鑑定に基づいて、その60%~90%くらいが担保価値、ということになります。この「掛け目」については、金融機関によっても異なりますし、債務者の職業とか支払能力によって査定されることになります。
もちろん、金融機関によってさらに独自の審査項目があったり、最近では反社会的勢力との関係なども問題となりますが、基本にはこのような定型的審査基準が定められています。

 具体的に見てみましょう。Aさんは、年収500万円、手取り400万円、Bさんは年収750万円、手取り600万円だったとしましょう。
この場合、返済可能額はAさんは年間120万円、月額10万円ですから、30年ローンを組めば2500万円くらいまでなら借り入れても返済可能、ということになります。
ですから、Bさんが3000万円の中古マンションを購入しようとすると、500万円以上自己資金を用意する必要があります。
これに対して、Bさんの返済可能額は、年間190万円、月額15万8000円程度になりますので、3800万円くらいなら借りることができます。
でも、Bさんは4500万円の戸建て住宅を購入したいとすれば、今度は担保評価の方が問題になってきます。仮に、金融機関の担保掛け目が80%だとすると、担保評価額は、3600万円ですから金融機関はその金額までしか貸してくれません。ですから、Bさんは自己資金を900万円以上用意する必要があるのです。

 このように、住宅ローンの借入可能額は、年収と物件の担保価値に大きく左右されますが、年間返済額については住宅ローンの組み方にも影響を受けます。具体的なローンの組み方については、金融機関やFPなどに相談することをお勧めします。

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