土地や家を購入するのは、ほとんどの方にとって一生に一度の大きなイベントです。でも、実際にはどうやってやったらいいのかわからないので、司法書士とか仲介業者に任せたまま、ということが多いと思います。そこで、今回は、どうやって売買に基づく所有権の移転がなされるのか、についてご説明したいと思います。
まず、売買契約、と簡単に言いますが、法律上は、代金を支払って目的物の所有権を移転するという合意、ということになります。ですから、不動産の場合でも、代金の支払それから所有権の移転、具体的には引渡と移転登記を行うこと、が重要になります。問題は不動産売買の場合値段が高いので、売主、買主ともに納得できて安全なやり方で実行する必要がある、ということです。
アメリカなどでは、「エスクロー」と言って弁護士などが売買代金を一旦預かって、そのうえで不動産を調査して、売主が確かに所有者だし、瑕疵もない、ということになって、所有権移転の申請を行い、代金も売主に支払う、という手順で行われるため、売買契約の決済ができるまで相当時間がかかります。ところが、日本には不動産登記、という便利な制度があります。そこで司法書士が決済の立会をする、ということになります。つまり司法書士が登記の内容を確認して、売主からの所有権移転登記ができる、ということであれば、買主による代金の支払と引換に登記に必要な書類を預かって移転登記手続をする、ということになります。ちなみに、司法書士には「立会義務」というものがあって、所有権移転の原因となる売買契約、抵当権設定の原因となる金銭消費貸借契約がちゃんと存在するのか、も確認する義務があると言われています。
こういう理由で、日本においては、金融機関の支店などにおいて決済当日の朝に関係者が集まって、売主が移転登記用の書類を用意してきます。そして、司法書士が移転登記に関する書類を確認したうえで、買主が融資を受けてそれを売主に支払って決済が終わる、ということになります。こういうやり方を「引換給付」と言います。もっとも、不動産登記には、そこに記載された所有者に所有権があることを保証するという効果(「公信力」と言います。)はありませんので、絶対にこれで安心というわけではないのですが、平成16年の不動産登記法改正以来、実際には無権利者なのに登記上権利者になっている、ということはほとんど考えられなくなりました。ただ、不動産の決済にあたっては従来から付いている担保権の抹消も必要となりますので、本当に抵当権者が担保権の抹消に同意しているのか、の確認については注意が必要です。
それでは次に、売買対象物件に瑕疵があるか、については、どう判断するのか、というと不動産仲介業者が作成した「重要事項説明書」が頼りとなるのですが、この点については次回ご説明したいと思います。
以上