暮らしに役立つ法律用語 第27回「地図訂正」

以前ご説明したように、不動産登記法は、登記情報に地図を備え付けなければならない、と定めているのですが(同法14条1項)、土地の登記事項には地図番号というものが付いていて、これによって登記で表示された土地の境界がわかるような仕組みになっています。この地図を14条1項地図、と呼んでいます。

この14条1項地図が備えられている土地は、日本全体で50%ほどしかない、と言われています。
というのは、この14条1項地図のほとんどは、区画整理か、あるいは国土調査によって作成された地図で、具体的には、区画整理とか国土調査が行われると、それによって作成された地図が法務局に送られることになっています。
そして、法務局でこの地図は確度が高い、と判断すると14条1項地図として備え置く、ということになります。ところが、東京などの都市部では国土調査が進んでいないために、都市部ほど地図が整備されていないのが実情です。

 それでは、こういった登記所に備えられている地図が絶対に正しいのか、というと、区画整理の場合はともかく、国土調査による地図が14条地図となった場合には、地図が誤っている可能性も否定できません。ですから、14条1項地図が間違っている場合には、「地図訂正」の申し出をすることができます(不動産登記規則第16条)。
具体的に地図訂正が必要な場合としては、まず筆界確定訴訟によって確定した境界が14条1項地図と異なる場合で、
この場合は判決を添えて地図訂正の申し出をすれば、地図訂正は可能です。次に、「筆界特定手続」によって登記官が特定した境界が、14条1項地図の境界と異なる場合は、登記官が地図で示された境界が間違っている、というのですから、これも申し出をすれば地図訂正をしてもらえます。
問題は、当事者間で認識した境界、例えば話し合いによってここが境界だ、と決めたものが、14条1項地図の境界と異なっていた場合です。この場合には、境界の異動に伴う地積更正登記も受け付けてもらえないことになります。
こういった場合に地図訂正の申し出をしても、地図に誤りがあることを示す情報を提示しなければならない、とされており、話し合いで決めた、ということでは地図訂正はできないのです。

それではこういう場合にはどうしたらよいのか、というと、当事者の決めた境界と、法務局の地図上の境界が違っているのであれば、その食い違う部分を分筆して、なんらかの原因(例えば時効取得)で分筆した土地を移転登記するほかありません。このように考えると、地図訂正という手続きはあるものの、結論としては、筆界だけでなく、法務局の地図も当事者間の合意では動かせない、ということなのです。
以 上

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