暮らしに役立つ法律用語 第24回「筆界特定手続」

第24回 「筆界特定手続」

前回のこのコラムで、境界を確定するのはなかなか大変だ、ということをお話しましたが、土地家屋調査士の先生に調査、測量してもらっても、周囲の方になかなか理解してもらえず、境界確認書にサインしてもらえないとか、そもそも隣地の所有者が別の境界を主張することも考えられます。

そのような場合には、境界確認書が作成できないので、登記申請ができません。そこで、このような場合に利用できる制度として、平成16年に「筆界特定手続」という手続が創設されました。

 この筆界特定手続においては、土地家屋調査士が問題の土地の所有者の代理人となり、その土地を管轄する法務局に所属する「筆界特定登記官」に対し、筆界の「特定」を求めることになります。こういうと難しく聞こえますが、要するにきちんと測量したにもかかわらず境界についての合意ができないときは、境界がどこにあるのか、特定するように法務局の登記官に請求することができるのです。この筆界特定申請を行いますと、周囲の土地の所有者などから意見書や資料が提出され、登記官が現地を確認して、ここが筆界だ、というのを「特定」してくれます。この特定、というのは裁判所境界が確定した、という状況とは異なるのですが、登記事務を司る登記官が公法上の境界である「筆界」を特定するのですから、境界確認書がなくても、特定された筆界が境界であるとして地積測量図を添付して登記申請すれば、地積更正登記も分筆登記も受け付けてもらうことができます。

 この手続は、道路との境界についても利用することができます。全面道路が市道であれば市を、県道であれば県を相手にして筆界特定を申請することができます。また、筆界特定の結果、隣地の所有者の言っていることより、こちらの主張の方が正しい、という結果になったときに、従来法務局に提出されていた地積測量図が間違っていた、ということになることも考えられます。このような場合には、不動産登記規則に定められた「地図訂正」という制度があり(規則16条)、正しい地積測量図を法務局に備え付けてもらうことができます。

 なお、筆界特定の結果特定された境界に承服できない、と言うときは、裁判を起こすことになります。筆界は国が決める、と言っても、所有権という権利の範囲と密接に関連していますので、最終的には裁判所が境界を決定しないと法律上確定したことにはならないのです。こういう裁判手続を「筆界確定訴訟」と言いますが、なかなか時間とコストがかかって大変な手続です。そこまでコストを掛けたくない、というのであれば、各地の土地家屋調査士会で、「境界ADR」という話し合いの手続をする場を設けていますので、そちらを利用されるのも検討してみると良いと思います。

以 上

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