暮らしに役立つ法律用語 第21回「境界の確定方法」

不動産取引は、境界について大分うるさくなりました。

昔は、売主が境界を指示する(指し示す)、といった売買契約が多かったのですが、近時不動産を売却しようとすると、境界の確定が不可欠になってきています。では、その境界というのは、

どうやって決まるのでしょうか? 一般の方のイメージでは、二つの土地の所有者がここが境界だ、と合意すれば境界が決まるように思われます。しかし、「境界」には、土地の取引単位として国が決めた「筆界」と所有権の範囲を表す「所有権界」があります。所有権界の方は、所有者が自由に処分できるのですが、「筆界」は、国が決めることですから私人間の合意によっては動かすことはできません。そして、不動産取引で問題となる境界、とは、主にこの筆界のことなのです。

さきほどもご説明したように、不動産取引においては、境界が確定していて、土地の面積(地積)もきちんと測量されている、というのが望ましいという状況になってきています。そこで、隣地の方と話し合って、ここら辺が境界だろう、ということで「境界確認書」を作成して、それで法務局(登記所)に持ち込んでも登記所では受け付けてくれません。とういのは、地積更正登記にあたっては、その土地の測量図面(地積測量図)を添付しなければならない、とされており、現在ではGPS測量して地積測量図を添付しないと受け付けてもらえないのです。

それどころか、きちんと当事者間で合意した境界点にしたがって測量しても、法務局で過去に認識している境界と異なる場合(例えば先代同士ですでに境界確認していた、など)、には、法務局がその境界を認めない、したがって、地積更正登記も受け付けてもらえない、ということもありえないわけではありません。ですから、境界をきちんと確定して、土地を取引しようと思ったら、次のような手順が必要になります。

① 土地家屋調査士に依頼して、過去の境界の確定状況について調査してもらう。
② 対象となる土地を測量して、地積測量図を作る。
③ 周囲の土地の所有者全員との間で境界確認書を作成する。
こういう手順が必要ですので、取引対象土地の境界を確定するのは、なかなか手間とコストがかかるのです。しかも、厄介なのは、過去に測量していても、登記の申請をする際に、再度測量し直す必要がある、ということです。土地家屋調査士の仕事は、登記記録の表題部(第17回を参照してください。)の登記申請代理人になる、ということですが、その場合、自らが測量した地図を添付しないと登記申請できないとされているのです。

なお、このような手続は、一筆の土地を複数に分筆するときも全く同様です。分筆登記する場合には、分筆される土地だけでなく、分筆後の土地についても地積を確定して登記申請しないと法務局で受け付けてもらえませんので、分筆の対象となる土地をまず測量して、その周囲について、すべて境界確認書を作成する必要があるわけです。
以 上

目次