暮らしに役立つ法律用語 第20回「公図とはなにか?」

前回は、不動産の登記事項についてご説明しましたが、実際の不動産取引で一番問題となるのは、「境界」です。以前は、不動産取引にあたって、対象土地については売主が考えている境界を示して、界標などが確認できれば取引を行っていましたが、最近では登記所の備え置かれた地図が充実してきており、取引にあたっては境界を確定することが通例となっています。他方、登記所で「公図」を確認してきた、などという話も聞きますが、公図とは一体なんでしょうか?実は、公図には法的に明確な根拠はなく、法的な効力も認められない図面です。

 土地の境界は登記制度に基づいて、一つの権利の対象として決められたものです。ですから登記上の境界は、「筆界」と言って、私人間では変更することができない、とされているのです。そして、どこが境界か、については、不動産登記法は、14条1項において、登記記録には地図及び建物配置図を備え付けること、と定めています。ですから、本来、この登記記録に付属する地図を見れば、境界がわかるはずになっています。しかし、現実には日本中で50%程度しか同法14条1項に定める地図は備え置かれておりません。それも、国土調査の結果が登記所に送付されて地図になったものがほとんどで、国土調査の進んでいない東京23区などでは、地図が整っているのは10%未満だと言われています。

 そもそも、現在の登記制度が整備されたのは意外に新しくて昭和25年からなのですが、それ以前は登記制度と別建てで、土地台帳、家屋台帳、というものがありました。この土地台帳に付属していた地図が現在一般に「公図」と言われている図面で、不動産登記法14条4項の「地図に準じる図面」でしかないのです。土地台帳というのは、土地に固定資産税を掛けるための制度ですから、その図面も大雑把な位置が解ればよいので、公図によって境界を確定することはできません。また、公図は課税の対象とならない道路については地番が入っていないのが特徴です。これに対して、近時備え付けられた「地積測量図」は、その多くが14条1項の地図となりうるものです。最近は土地の面積を求めるのも、いわゆる三角測量などはしません。GPSの座標を表示して測量しますので、地積測量図にGPS座標が表示されていれば、土地の境界は明確です。

 そして、こういった境界をある程度特定できるような地図があるのかどうか、は、不動産登記記録の「表題部」のすぐ下「所在図番号」に表示されているのです。この所在図番号があれば、その番号を引っ張ると境界が特定できる地図を見つけることができます。ですから、不動産取引にあたっては、又は、遺言ないし相続の処理にあたって、ご自分の所有地についてきちんと境界が特定できるのか、は、登記記録を見るとすぐにわかるのです。
そこで、次に、境界が登記記録上特定できないときはどうしたらよいか、ということが問題となりますが、それは次回にご説明したいと思います。

以 上

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