暮らしに役立つ法律用語 第2回 自筆証言遺言

手軽だが作成には注意が必要!

 自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の本文、日付、氏名を自分で書き、押印して作成する遺言です。自筆証書遺言は遺言者で密かに作成しますからその実数は分からないわけですが、家庭裁判所の検認手続に表れた数字からは、年間2万件程度行われていると思われます(公正証書遺言の約4分の1)。

自筆証書遺言のメリットは、
① 誰にも知られずに遺言書を作成することができること、
② 作成費用がかからないことです。
他方、デメリットは、
①方式不備で無効とされる危険性が大きいこと、
② 遺言者の死後に遺言書が発見されない危険性、
③ 封印されていないため偽造・変造される危険性が大きいことです。

 自筆証書遺言の作成に当たって注意すべき点は、まず、遺言者が遺言書の全文を自書することです。ワープロ打ちのものは自書とは認められません。また、自筆証書遺言では、証人も立会人もいないため、日付の自書が不可欠です。日付は、遺言証書自体に記載することが必要で、証書を入れた封筒に記載があっても、原則としてその遺言は無効となります。氏名は、遺言者を特定するものですから、自筆証書遺言上に自署が必要となりますが、戸籍上の氏名の記載がなくても、通称等でもよいとされています。押印は、遺言の本文が書かれた書面上にされていれば足りるとされており、必ずしも署名の下にされていなくてもかまいません。

 遺言においては、一般的には法定相続人に遺産分割方法の指定などをするときは、「相続させる。」という文言を使いますが、自筆証書遺言においては、そういった文言が使用されていないケースもあり、さらには遺言者に法律知識が不足しているために、特定の相続人に多くの遺産を分け与えるように指定してしまって、遺留分を侵害してしまうこともあります。本来、遺言は死後の遺産分割にあたっての紛争を回避するものなのですが、遺留分を侵害しと、かえって相続人間の紛争を招くことにもなりかねません。さらには、法定相続人間で仲がよくない、といった場合には、自筆証書遺言があっても、それは偽造・変造されたものだ、と主張されて、訴訟になることも考えられますので、自筆証書遺言については、発見後早急に裁判所で検認手続(遺言書の現状を確認し明らかにする手続)を受けることが不可欠です。

 このように考えると、やはり自筆証書遺言は、安定性という点においては、公正証書遺言には劣ります。しかしながら、本来、遺言者は自分の遺産を死後どう処分するかの自由がありますので、自筆証書遺言という簡便性の高い遺言を利用することも、遺言者の「遺志」を示すうえでは、相当有効な手段であると言ってよいでしょう。

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