美しい高齢者施設をつくる 第6回「私が設計した高齢者向け住宅がグッドデザイン賞2015金賞、 神奈川建築コンクール優秀賞を受賞しました。」

先回の予告ではプレゼンテーションについてお話をする予定でしたが、今回は昨年私が設計監理をいたしましたサービス付き、高齢者向け住宅「わかたけの杜」がグッドデザイン賞2015金賞(産業経済大臣賞)、神奈川建築コンクール優秀賞を受賞しましたことをご報告させていただきます。

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「わかたけの杜」は横浜市こどもの国駅に程近く、敷地内西側に市の保存樹林がある緑豊かな環境にあります。サービス付き高齢者向け住宅に24時間対応の診療所・訪問介護・看護を併設し、隣接する老健と特養のデイサービスの連携によって地域コミュニティを生み出す地域包括ケアが自己完結した「高齢者が住続けられる都市」として設計しました。一見街のようですが、実は一敷地に建つ建築なのです。

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    東側外観 

敷地は高圧電線によって東西に分断されてしまいましたので、その下をスパインとすることで施設間をつなぐ利用者の交流と憩いのプロムナード(イベント広場)として整備すると同時に、施設全体を「土に近い暮らし」の享受と保存樹林を持つ敷地景観に配慮した2階建てとし、外観を色やズレによって分節することで視認性を高めるデザインとしました。

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  下の路地 

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上の路地と空中歩廊 

「気配が伝わる」といった自然・隣人との距離感こそ重要と考え、東棟ではコミュニティの核となるセンターハウス(EV、食堂、ラウンジ) を中心に、6棟を空中歩廊で繋ぐ低層分棟連結型とすることで上下の視線が立体的に交差する構成です。有孔折板のスクリーンを通して外部に 気配が感じられる住戸(50㎡)は可動間仕切と家具によって、ADLが低下してもQOLの低下を招かない自由な平面が選択できる。診療所併設の西棟は 森に開いた共用リビングをもつ住戸(20㎡)と光庭を持つ住戸(40㎡)があり、住戸選択の巾を更に広げています。

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センターハウス食堂  

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センターハウスラウンジ

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住戸内部(家具、間仕切りは全て可動)

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住戸パターン
おかげさまで、工事中に予約でいっぱいになる大変な大盛況でした。お父様を入居された息子さんは「友達と一緒に住みたい」と言い、入居者様が選んだ 理由の第一は、「こんな施設は他に無いから」とのことでした。

次回から本題にもどって、私たちがクライアントに対してどのようにプレゼンテーションをして設計を進めているかをお話しいたします。

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