私がダイアグラムを重視するのには理由があります。
私は設計に際して高齢者施設は「住宅の設計」というスタンスで取り組んでいます。その理由はどんなに大きな施設でもそこで行われる行為は普段我々が毎日過ごしている住宅での行為そのものだからです。
ですが大型の高齢者施設になるほど介護や医療などのサービスに関わる機能やバリアフリー上必要なスペースの付加によって本来住宅であるはずの施設がモンスターのように肥大化し複雑になります。
ただでさえ複雑なのに私のほかにその施設に関わる様々な人が計画に参加し、それぞれの立場で勝手に意見や要望出してきます。それぞれの方は無意識のうちに自分に関係のある領域に夢中になってしまい、肝心のエンドユーザーである高齢者の「住宅」としての居心地が置き去りにされ、その結果「ここには入りたくないなー」と思われてしまう施設になってしまうのです。
それでは設計の初期段階で誤解を生じないためにはどうすれば良いのでしょうか?。
私は設計の初期段階で関係者から全ての要望を出してもらいます。そうするとなさんの要望は施設の規模や予算を超えて無限に広がっていきます。それでも全部出し切っていただくのです。例えば以下のような要望が出てきます。
その後要望を分析してダイアグラムを作成します。平面もデザイン決まっていない段階で作成することが重要です。無限にある可能性から機能の最適解として提示するものなのです。
これによって全ての関係者が共通理解を持ち、複雑に入り組んだ機能やイメージを共有することができます。
また、関係者個人が考える小さな要望が実は計画全体に大きな影響を及ぼすことが理解でき、無理な要望は出しにくくなります。結果として施設の本質を見失うことがありません。
事例はグループホームとサービス付き高齢者向け住宅、小規模多機能施設などが複合した施設のダイアグラムです。葉である住戸部分と共有部が幹の部分が枝によって有機的につながる状況はまるで大きな木のようです。
「大きな木に抱かれた安心のある暮らし・・・」漠然としたイメージが全ての関係者の共通認識となっていくのです。