第11回 相続の事例
相続の事例
Q 実際の相続の事例としては、どのような問題がありますか?

A   

相続の事例や問題は案件によって千差万別で実に様々でありますが、相続問題としてよくあるケースを2つほど(もっと、もっと沢山あります)紹介してみます。

ケース1 法定相続分 ~ 時に大問題にも・・・
これ、実は母親の実家の相続の話です。まさか、身内でこんな問題が燻るとは考えもしませんでした。

相続対策の第一は「遺産分割対策」にあると考えます。この「遺産分割」、良く聞く言葉でありますが、基本にして最大の問題と言ってもいいのではないでしょうか。
例えば、先祖代々受け継いできた土地を有する地主の方の相続を考えた場合、相続人に法定相続分どおり分けてしまっていいでしょうか?    いいえ、皆さんもお考えのとおり答えは「NO」です。確かに民法900条では法定相続分が定められていますが、それは一つの目安にすぎませんし、法定相続分どおりに遺産分割をしていたら「地主さん」は存在しなくなってしまうと思います。

地主さんには、地主として財産を維持していくことや財産を目減りさせないことを求められるわけですし、実際には総領息子にできるだけ多くの財産を承継させて、独立した息子さんや嫁いだ娘さんには「はんこ代」程度で承諾してもらう事が一般的でしょう。

財産の全てが現金や預金であれば遺産分割は簡単ですが、財産のほとんどが土地(あるいは同族会社の株式)だった場合には、共有相続(問題の先送りであって、将来の「争族」の始まり・・・)を選択する場合は別として、不動産を処分して遺産分割することになるでしょうから、結果として、巷で言う「(相続が)3代続くと財産が無くなる。」という事態になりかねません。
相続人の「無知」が故の「法定相続分」の主張により、分割協議の場が荒れてしまうことはあります。幸いにも今までは、話の交通整理のお手伝いで事なきを得ていますが・・・・・

ケース2 相続人ではないのに・・・・・・
父親は数年前に他界しており、母親の面倒は未婚の長女が看て来て、次女は嫁ぎ先からたまに見舞いに来ていました。その他に男兄弟が2人いました。  母親は遺言を残していました。自分の人生を犠牲にしてまで看病をしてくれた長女に財産の半分以上を、他の兄弟たちには残りの財産をおおよそ均等に。それと、何故このように財産を分けたいかという理由とともに。 長女の献身的な看病について男兄弟は感謝していて、母親が残した遺言の内容は納得しましたが、不満に思ったのは次女でした。遺言には「長女には、自分の幸せを犠牲にしてまで面倒を見てくれたのだから財産を残してあげたい。次女は結婚して幸せを手に入れた事だし、あまり見舞いに来てくれなかった。」と記載されていたからです。

 次女としては面目をつぶされたわけです。分割協議の場では「本当は母親の看病をしたかった。自分は結婚して見舞いになかなか来られなかっただけ。」と主張。財産が欲しいという事ではなく、同じ娘としての面目の問題でした。 始めは。その後、紆余曲折があって次女は次第に「無言」になり、代わりに次女の夫が分割協議の場に同席するようになりました。名目は次女の代弁者です。次女の夫は「法定相続分」を言い出し始めましたが、さすがに男兄弟たちが諌めて、結果的に遺言どおりの遺産分割となりました。
次女の夫は相続人でもないのに、分割協議の場で主導権を握ろうとしましたが、結果的に夫婦で面目をつぶされた形になりました。常識で考えれば、次女の夫が代弁する事もどうかと思いますし、財産をもっと貰えるはずだと言い出すのも「美しい姿」とは思えませんでした。次女の夫の怒りの矛先が、私どもに向かって来た時はとても困惑したものです。

注意するポイント ~ それは以外にも簡単な事です!
このように、少しだけ冷静になれば決してやらない行動が、相続の現場では実際におこります。些細な言葉の言い間違いやちょっとした感情のもつれ、極端な例ではお互いが子供だった時に喧嘩した事を思い出して、私どもの前で「兄貴が先に手を出した!」とか「お姉ちゃんは贔屓されていた!」とか、これもよくある事ですが近所で不幸があると、いろいろな方が「ああした方がいい。こうした方がいい。」と助言をしてくれる方も出てきて、無責任な第三者の善意(?)に振り回されてしまう事や、自分に都合がいい知識だけを調べてくる方も見受けられます。

これらの事例から学べることは、相続について正しい知識と理解が必要という事に尽きると思います。「相続」は人生の中でそう何度も経験することではありませんから、「正しい知識」を身に着けることは難しいかもしれませんが、自分の考えを発言する前に一呼吸おいて、「このような場合は実務ではどうするのですか?」と税理士などに聞いてもらうのが良いと思います。税理士は専門家の立場から適切なアドバイスと分割協議の「交通整理」をしてくれるでしょう。
お亡くなりになられた方は勿論、遺族の方々も争う事は望んでいないはずです。盆暮に親族が皆そろって仏壇に向かって線香をあげられる、そのような円満な「相続」になって欲しいと願うところです。

 

益本プロフィール

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益本正藏

税理士
税理士法人 総和
http://www.m-partners.jp/
益本公認会計士事務所
代表社員

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