暮らしに役立つ法律用語 第7回 遺留分その(2)

遺留分減殺の対象となる贈与とは?

前回、遺留分、という制度についてご説明しましたが、遺留分算定の基礎となる財産は、被相続人が相続開始時点で有していた財産に過去に贈与された財産を加え、相続債務を控除して算定します。

 過去になされた贈与は、相続開始前の1年間になされたものに限りますが、例外が3つあります。一つは、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた贈与です。このような贈与は、相続の1年前より過去にされたものであっても遺留分算定の基礎財産に算入され、遺留分減殺請求の対象となります。

 2つ目は、共同相続人に対してなされた贈与が特別受益に当たる場合です。この場合の贈与は、相続開始1年前であるか否か、損害を加えることの認識の有無を問わず、遺留分算定の基礎財産に算入され、特別の事情がない限り、減殺請求の対象となります。特別受益とは、相続人が特別に受けた贈与等を言いますが、特別受益に当たる生前贈与は相続財産の前渡に当たるわけです。

 例外の3つ目は、不相当な対価でされた有償行為です。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行ったときは贈与とみなされ、処分行為の時期を問わず、正当な価額との差額が贈与として基礎財産に算入されます。

 そうなりますと、遺言があってその内容としては一見遺留分を侵害していないように見えても、特別受益を含めると遺留分を侵害している、ということもありますし、遺言が全くない場合でも、生前贈与が遺留分を侵害している、というケースも考えられます。逆に、遺言書の内容としては、遺留分を侵害しているように見えても、特別受益を含めると遺留分の侵害が起きていないというケースもあります。このような場合、一旦相続財産の範囲外となった生前贈与を特別受益として再度相続財産に含めることになりますので、「特別受益の持ち戻し」と言われています。

 また、遺留分減殺請求は、相続開始及び減殺すべき贈与・遺贈があったことを知った時から1年又は相続開始から10年を経過した場合に消滅します。相続開始から1年というと短いようですが、前回ご説明したように遺留減殺請求権の行使には裁判を提起する必要はありませんので、ともあれ遺留分減殺請求を行使する、という意思表示が1年以内になされればよい訳です。実務上は、内容証明郵便などによってとりあえず遺留分減殺請求権を行使する旨通知しておくのが一般的です。なお、遺留分減殺請求権が行使された場合、贈与と遺贈が併存するときは、まず遺贈から減殺の対象となり、それでも足りない時に初めて贈与から減殺できる、とされています。

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