暮らしに役立つ法律用語 第1回 公正証書遺言

信頼性が高く最も安全な遺言書

 遺言は、亡くなった後、自分の財産などの処理の仕方についての自分の意思を示す文書です。遺言をしなくても、相続財産の処理は民法に従って行われますが、遺言をすることで自分の意思で財産の処理方法を決めることができます。

例えば、自宅は長男にどうしても残したいとか、娘婿が社長なので事業関係の財産を娘に相続させたいといった場合などには、遺言を残しておいた方がよいでしょう。
遺言は、口頭でなく遺言書(書面)にする必要があります。そして、遺言書の種類は、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の三種類があって、どれも法律で作成方式が決められており、様式を無視した「遺言書」は、法律上無効となります。

 遺言の中で、最も安全で後々争いが生じにくい方法が公正証書遺言です。これは年間8万件程行われ、自筆証書遺や秘密証書遺言より数多く行われています。
公証人は、国が、裁判官、検察官など長年法律の仕事をした人の中から任命した人で、一定の事項を公に証明する文書(公正証書)を作成する仕事をしています。公正証書遺言は、遺言を残す人が、遺言内容を「公証人」に伝え(通常、弁護士を代理人にして事前にやりとりします。)、公証人がその内容を証書にすることで作られます。

公正証書遺言の作成時には、2名の証人が必要で、遺言を残す人が、公証人と証人2名立会いのもと遺言の内容を伝え、公証人がそれを書面にして全員で内容を確認して署名押印をすると公正証書遺言が完成します。公正証書遺言ができると、遺言者にその謄本が交付されますが、原本は公証役場で保管されていて、いつでもその謄本の作成を要請することができます。

公正証書遺言の作成には、若干費用が生じますが、通常の遺言(特に自筆証書遺言)では、相続発生後に遺言の効力が問題となって、裁判となることがありますが、公正証書の場合にはその効力についての紛争はほとんど起きません。公正証書遺言を作るには、遺言者も通常弁護士を代理人にしますし、公証人という法律の専門家でかつ中立的な立場の者が作るので、その信用性は極めて高いのです。ですから、残念ながらお子さん同士で仲が良くないとか、自分の相続発生後に紛争が生じそうな場合には、公正証書遺言を作成しておくメリットは特に大である、ということができます。
遺言や公正証書遺言の作成にご関心のある方は、弁護士などの専門家にご相談されることをおすすめします。

目次