第12回「保育園が完成しました。厳しい敷地条件の克服方法」

7月に私が設計した敷地の三重苦を克服した保育園が完成しました。


 

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川崎市溝ノ口駅から徒歩数分にある「あぷりこっと保育園 エミタス久本」です。
「幼老複合施設」というものをご存知でしょうか。保育園と高齢者施設一つ屋根の下に複合した施設のことです。メリットは子どもと高齢者が日常的に交流することで高齢者は表情が豊かになって元気になり、子どもは核家族化で疎遠となった高齢者とのふれあいを通して積極性が身につくなどの教育効果が期待できます。
高齢者と幼児の双方に大変メリットがあることから各地に増えている施設形態ですが・・・・・。
しかし土地が狭い大都市近郊では保育園と高齢者施設を複合化した大規模施設を民間で建設することはなかなか難しいかもしれません。
この保育園のオーナーは既に保育園複合シェアハウスといったユニークな施設を運営しており、今後は地域に集中してサービス付き高齢者向け住宅やデイサービス、放課後児童クラブ、こども食堂(非収益)、無料塾(非収益)を整備し、幼児から高齢者まで(小中高生も含めて)利用できる福祉施設を溝ノ口周辺に整備することで生まれ育った地域に恩返しをするという夢を持っています。
一つの建物に複合化するのではなく、単体施設を地域に点在させてネットワークをつくることを目指しているのです。また、一般的な幼児と高齢者のコミュニケーションだけではなく、中間層である小中高の子供達の役割を持った居場所「ザ・サード・プレイス」も念頭に入れています。

この保育園はとんでもない敷地条件で、「狭い・変形・高低差」といった大都市に近い丘陵地が抱える三重苦を克服する必要がありました。
これら三重苦は高齢者施設の建設でも問題となりますが、保育園はバリアフリー、生活空間、職員所室といった高齢者施設と共通した機能や許認可保育園としての条件を満たす必要がありました。
私が三重苦を解決したコンセプトを以下にまとめます。
◯敷地の三重苦(狭い・変形・高低差)が課題でした。
敷地は北向きの公園に面した斜面に位置していて、許認可保育園として園庭が取れない狭小地でした。さらに敷地は南北で8メートルの高低差があり、大変複雑な変形地でした。さらに10Mの高さ制限や隣接する擁壁の基礎が大きな障害でした。

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 ◯コンセプト1:伝統町家に学ぶ配置構成=「通り庭のある保育園」
伝統的な商家では土間(通り庭)に面して部屋が連なり中央に採光換気の吹抜けがあります。通り庭は単なる通路ではなく、様々な活動が行われる場所です。これは間口が狭い敷地における生活の知恵です。

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今回この活動的な通路としての「通り庭」を保育園に設けました。

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 ◯コンセプト2:傾斜地を効果的に利用した断面構成
緑に面した高低差を効果的に利用して、最下階に障害者送迎車両庫と車椅子利用者様(EV利用)勝手口を設け、に森の自然を感じる屋上やテラスを配置しました。

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 ◯コンセプト3:フレキシブルに使える保育室
狭さを克服するために、本来部屋の隅に配置する水回り(トイレ・手洗い)を採光と換気を促す装置として部屋の中心に配置しました。行灯のように天井から木漏れ日と風が抜けます。また、可動家具で定員の変化や活動に合わせて自由に仕切ることができます。
少ない保育士が園児を見守る保育園ならではのプランですが、高齢者施設においても食事や機能回復訓練などフレキシブルに簡単に可変できる仕組みは有効です。

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 いかがでしたでしょうか。
高齢者施設においても都市近郊における不利な敷地条件の問題があり、敷地を見て頭を悩ませる場面が多いことと思います。
この計画は試行錯誤の連続でした。10Mの高さ制限や隣接する擁壁をかわすために上層階を擁壁上に突き出すなどの細かい工夫もしています。
以上のような様々な工夫をすることで不利な敷地条件であっても魅力的な施設が実現できることを知っていただければ幸いです。

 

  

吉田明弘++++++++++++AkihiroYoshida
(株)ヨシダデザインワークショップ
代表取締役・建築家・一級建築士 
東京都文京区本駒込5−2−5-602
TEL 03-6902-0108
携帯090-3213-8277
e-mail:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。
URL http://yoshida-dw.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉田プロフィール

yoshida
吉田明弘
 

建築家 一級建築士
1965年東京都生まれ
1990年日本大学工学部建築学科卒業
アプル総合計画事務所に入所(最終肩書 取締役副所長 管理建築士)

 

(お問い合せ・連絡先)

http://yoshida-dw.com/

 

2005-2011年
大野秀敏とアプルデザインワークショップ共同主催 

代表取締役・管理建築士

 

2012年~現在 

株式会社ヨシダデザインワークショップを設立 代表取締役 所長

 

2011年~現在
日本大学理工学部非常勤講師

 

会社概要
社名:株式会社ヨシダデザインワークショップ
Akihiro Yoshida design workshop CO., LTD.
代表取締役:吉田明弘
資本金:900万円
会社設立:平成24年3月
一級建築士事務所登録:東京都知事登録第57739号
業務内容:建築設計・監理/インテリア設計・監理/
都市計画/工業デザイン/景観デザイン

 

受賞歴
BCS(建築業協会)賞
医療福祉建築賞
日本建築学会作品選奨
グッドデザイン賞
環境・設備デザイン賞入賞
ベルカ賞ベストリフォーム部門
JIA環境建築賞入賞
北陸建築文化賞
福島県建築文化賞優秀賞
キッズデザイン賞(建築・空間デザイン部門)
2008年度北陸建築文化賞
JCDデザインアワード銀賞
空間デザイン賞奨励賞
イソバンドデザインコンテスト優秀賞
AIA Northwest & Pacific Region Award SDA賞

 

掲載誌
月刊近代建築 2006年8号鯖江市中河小学校
新建築 2007年2月号

病院2009年8月号

フロイデ彦島
オーナーのための高齢者施設ガイドブック(建築ジャーナル)
JIA現代日本の建築家優秀建築選2007
新建築 2009年1月号YKK黒部事業所 ランドスケーププロジェクト
JIA現代日本の建築家優秀建築選2009

新建築2009年1月号
JA 73 SPRING

2009リノベーション、メタボリズム・ネクスト
建築設備2010年6月号
新建築2011年9月号

月刊近代建築2011年10月号YKKAP埼玉窓工場
建築家が教える人生を変える驚異のプレゼン エスナレジムック