第10回「ゾーンニング計画 サービス付き高齢者向け住宅の新しい形」

またしてもだいぶ間が空いてしまいました。
このところ新しいプロジェクトが忙しく大変申し訳ございませんでした。
私事ですが、現在工学院大学で2年生の設計製図を非常勤講師として後進を教えております。いつも学生に言っていることの一が「常識を疑う」という言葉です。

 

 高齢者施設を始めとする公共的施設の計画では「先進事例」などという美称を与えられた過去の施設に倣って計画する姿勢が重視されますが、過去にばかり向き合っていては昨今の激しい社会情勢や環境の変化に対応することができず問題解決の障害になってしまいます。また文化も停滞してしまいます。常識を疑うことは高齢者施設についても重要な視点なのです。
前回はユニットケアにおけるゾーニングについてお話をいたしましたが、今回はそんな「常識を疑う」姿勢から実現したサービス付き高齢者向け住宅「わかたけの杜」のゾーンニングについてお話しをいたします。
敷地は東京と横浜のベットタウンである横浜市青葉区こどもの国駅に程近く、敷地内西側に南北に続く「成瀬の尾根」の森と1970年代に開発された住宅街に挟まれた緑豊かな環境にあります。

◯これはゾーンニング図です。方位は図の右が北になります。
敷地(オレンジ色)は2棟の既存施設(特養と老健施設)に挟まれています。また西側の保存樹林と東側の住宅街の境界に位置しています。
地盤は弱く、東側(図中下側)の既存住宅街の住民からは保存樹林の景観を塞ぐような高層建物を建てないで欲しいとの要望もありました。地域の方々にとってこの緑は大切な景観なのです。
一方オーナー様にとっては左右の既存施設のサービスの連携が期待されるこの施設の事業性を考えて住戸数を確保したいと考えていました。

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◯実際に完成した状況です。
住戸(中央)は比較的に低層で右側の住宅街から十分に森が望めます。必要住戸数も確保できました(66戸)

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 いかがでしょうか?
みなさんがこれまで見たサービス付き高齢者向け住宅とだいぶイメージが違うのではないでしょうか。
都心に近いベットタウンでありながら高層化せず、ローコストでつくり更に必要住戸数を確保するためにどうしたらいいか・・・・・?それが最大の問題でした。

◯通常都市部では敷地の値段が高くて狭いため容積を最大限に利用する必要性から高層のマンションアパートタイプでサービウ付き高齢者向け住宅を建設します。
しかし高齢者の孤立化やフロアーの多層化によって住民が互いに感じる「見る見られる関係」が希薄となります。戸建て住宅から転居した場合は地面(土)が遠い環境になります。

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◯一方地方では土地が安くて広いので平家の戸建て住宅を隙間を開けて立てるので土が近く緑による四季折々の変化を感じながら生活ができます。また所在の確認も洗濯物や照明でなんとなく知ることもできます。

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◯これまで建設されてきたサービス付き高齢者向け住宅はだいたい上記の2タイプに当てはまります。これはある意味「常識的な形」です。

しかし私はこの2タイプの「中間」に当たる郊外型高齢者向け住宅の新しいタイプができないかと模索し、様々な問題をクライアントと共に一つ一つ解決していきました。その結果導き出した形状は、木造2階建長屋(低層)として住戸数をローコストで確保し、高密度にならないように長屋を分棟化して光と風を取り込み、更に共用の食堂とラウンジ、エレベータを持つセンターハウスと橋(鉄橋)で連絡した「低層・分棟・連結」型の住戸配置です。

 

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下図は2階の住戸配置を示したものですが、色(白、グレー、青、赤)が付いている部分が住戸でその間は「路地」と呼ぶ外部空間です。「路地」は2階では空中歩廊となります。単なる通路ではなく、ギザギザ雁行させて居場所や視点を作り出しています。

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誰でも計画時は見慣れた形がまず頭に浮かびますしそれを前提に話を進めるでしょう。ですが、常に「常識を疑う」姿勢があればこのような施設の実現が可能になります。この姿勢は私たちデザイナーだけではなく、それを理解してソフト(運営面)でさらに発展させてくれるクライアント様の進歩的な視点がなければ到底実現できませんでした。

わかたけの杜は常に空室待ちの状況で100%の入居率です。また選んだ方からは「こんな施設見たことがない」という嬉しい言葉をいただいております。

このプロジェクトのコンセプトはゾーンニングにとどまらず、細かな部分まで及んでいます。そちらはまたの機会にご披露させていただきます。

次回からは建物自体の計画についてお話をしたいと思います。

 

吉田明弘++++++++++++AkihiroYoshida
(株)ヨシダデザインワークショップ
代表取締役・建築家・一級建築士 
東京都文京区本駒込5−2−5-602
TEL 03-6902-0108
携帯090-3213-8277
e-mail:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。
URL http://yoshida-dw.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉田プロフィール

yoshida
吉田明弘
 

建築家 一級建築士
1965年東京都生まれ
1990年日本大学工学部建築学科卒業
アプル総合計画事務所に入所(最終肩書 取締役副所長 管理建築士)

 

(お問い合せ・連絡先)

http://yoshida-dw.com/

 

2005-2011年
大野秀敏とアプルデザインワークショップ共同主催 

代表取締役・管理建築士

 

2012年~現在 

株式会社ヨシダデザインワークショップを設立 代表取締役 所長

 

2011年~現在
日本大学理工学部非常勤講師

 

会社概要
社名:株式会社ヨシダデザインワークショップ
Akihiro Yoshida design workshop CO., LTD.
代表取締役:吉田明弘
資本金:900万円
会社設立:平成24年3月
一級建築士事務所登録:東京都知事登録第57739号
業務内容:建築設計・監理/インテリア設計・監理/
都市計画/工業デザイン/景観デザイン

 

受賞歴
BCS(建築業協会)賞
医療福祉建築賞
日本建築学会作品選奨
グッドデザイン賞
環境・設備デザイン賞入賞
ベルカ賞ベストリフォーム部門
JIA環境建築賞入賞
北陸建築文化賞
福島県建築文化賞優秀賞
キッズデザイン賞(建築・空間デザイン部門)
2008年度北陸建築文化賞
JCDデザインアワード銀賞
空間デザイン賞奨励賞
イソバンドデザインコンテスト優秀賞
AIA Northwest & Pacific Region Award SDA賞

 

掲載誌
月刊近代建築 2006年8号鯖江市中河小学校
新建築 2007年2月号

病院2009年8月号

フロイデ彦島
オーナーのための高齢者施設ガイドブック(建築ジャーナル)
JIA現代日本の建築家優秀建築選2007
新建築 2009年1月号YKK黒部事業所 ランドスケーププロジェクト
JIA現代日本の建築家優秀建築選2009

新建築2009年1月号
JA 73 SPRING

2009リノベーション、メタボリズム・ネクスト
建築設備2010年6月号
新建築2011年9月号

月刊近代建築2011年10月号YKKAP埼玉窓工場
建築家が教える人生を変える驚異のプレゼン エスナレジムック