コラム13回で私は「気配が伝わる空間をつくる。視覚的、聴覚的、嗅覚的、心理的に人や自然に触れあえる可能性を建築が用意する」ことが重要であるとお話しいたしました。

今回以降は「気配を伝える」空間をいかにして具体的に実現するかを複数回に分けてお話ししてまいります。まずは、その1として「格子の効果」です。

高齢者施設の計画では一方的な見守り(スタッフによる)も大切ですが、個室などプライバシーを尊重することも大切ですので、どうしても開く×閉じる、見える×見えない、といった二項対立で計画されています。しかし私はその中間的な見る側見られる側双方が意識しなくてもその関係が成り立つ曖昧な状態が大切だと思うのです。

なんだか難しそうですがそうでもありません。

例えばガラス窓を介した関係(喫茶店と街路の関係などお互い意識していませんが外と中は丸見えだけど音は聞こえない。お互い気にしない。)、吹き抜けを介した上下の関係(ショッピングセンターの吹き抜けの上下の関係。見えるけど、お互い気にしない)も程度の差こそあれ同じ関係と言えるでしょう。

お気づきかもしれませんが、この関係は繁華街など公共的な場所でよく見受けられる状態です。みなさんも街に出るとワクワクするし、身だしなみに気遣うなど生き生きとしますよね。気軽に外出できない高齢者の施設にそんな状況を作り出す方法の一つか「格子の効果」です。

“格子”による「見る見られる関係」

1枚のスクリーンでそのような関係を作り出す方法として“格子”があります。みなさんご存知の京都の商家などで見られるあの「格子戸」のことです。

 

yoshida020101 01格子による効果「見る見られる関係」

格子戸の内側からは店先を横切る舞妓さんの姿が内部から見えます。一方舞妓さんからは店の中は暗くて見えません。ですが、格子戸の機能は経験的に知っていますので、もしかしたら見られてるかもしれない、、、といった感覚になるでしょう。また、夜になると屋内が明るくなるのでその関係性は逆転します。

格子戸に限らず、穴の空いた板状のスクリーンや穴の大きさやピッチを変えることで様々な効果が得られます。また、夏は適度にプライバシーを守りつつ風が抜け、直射日光を和らげる環境装置として機能します。素晴らしい先人の知恵です。

 

yoshidav102金属製の現代の格子(有孔折板)
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障子と格子によるスクリーン。視線を適度に遮りつつ気配を伝えます。

日本古来の格子戸や障子は、見えるようで見えない。気配だけが伝わる。影だけが見える。など、奥ゆかしさが感じられます。人間の目は格子を意識すると外が見えなくなり、外を意識すると格子は目立たなくなります。

いつのまにか障子も登場してしまいましたが、障子には光や影が見えても完全には見えないという同様の「気配を伝える」効果があります。このように見えそうで見えない関係、気配が伝わる関係によって13回でお話したような、緩やかな「見守りの関係」を作り出すことができます。

 

次回は「気配を伝える」別の方法を掘り下げます。

 


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