前回は家族信託を活用した認知症対策のお話をしてきました。実は、家族信託には、受益者がお亡くなりになった後の財産の引継ぎ先をあらかじめ決めておけるという、もう一つの機能が存在します。今回は、家族信託のもう一つの特徴である受益者連続型の信託についてお話しいたします。

◯遺言書って弱点があるの?

ご自身の財産を次世代に承継させる場合、皆さんの頭に最初に思い浮かぶのは、遺言書ではないでしょうか?ドラマなどでもよく登場するこの遺言書、実は、弱点が2つあります。

 

弱点①『生前の対策は何もできない』

遺言はあくまでも死後の財産承継先を決定するものです。誰に、何を、どのくらいあげたいのか、この三つを決めることができるものと思っていただければと思います。要するに、遺言書に、ご存命中、家族にあれをしてほしい、これをしてほしいと書いたとしても、実現されることはありません。ちなみにご相談の現場でよくあることとして、お亡くなりになってからすぐのことを書いても実現されないかもしれないですよ?とお話することがあります。なぜなら、遺言書を遺族の方々が落ち着いて読むのは、だいたい四十九日に差し掛かる前あたりが一般的に多いからです。

 

弱点②『二次相続の指定ができない』

例えば「自分(A)が死んだら、長男Bに遺産を相続させる。その後、長男Bが死んだ場合は次男(C)の子である孫Dに相続させる。」という遺言は法律上無効です。どの部分が無効かと言いますと、「長男Bが死んだあとは、孫Dに相続させる」という部分です。なぜかというと、長男Bが財産を相続したらその財産はあくまで長男Bのものであり、その次に長男Bから財産を受け取る人は、長男Bが決めるものだからです。要するに、一旦長男Bの財産になってしまえば、Aは、一切口を出すことはできない、口出しできないことを遺言書に書いても無効ということですね。

以上2つを簡潔にまとめますと、遺言書は生前対策、二次相続の対策ができない、単に自分の財産の承継先を決めるのみという限定的なものであるということです。

◯遺言の弱点をカバーできてしまう家族信託の効果とは?

さて、遺言の弱点をここまで見てきましたが、家族信託を使うと前述した2つの弱点をカバーすることができます。家族信託は生前の認知症対策から相続発生後の承継、そして二次相続の承継対策までを含んだ制度なのです。

では、遺言では実現できなかった先ほどの弱点②の例について信託を使ってどのように実現していくのでしょうか。

Aが次男Cを受託者として財産を信託します。Aが存命中は次男CはAのために財産を管理します。
ここからが本題です、Aは、信託の受益者です。Aは信託した財産から発生する利益を受け取る権利(受益権)を持っていますので、Aの死亡後の受益権の引継ぎ先を決めておかなければなりません。
この受益権の引継ぎ先を長男Bと信託契約書に書いておきます、そうするとAが亡くなった後、次男Cは受益権を受け取った長男Bのために財産を管理することになります。
信託財産から出る利益は、原則、全て受益者のものとなりますので、Cが預かっている財産は、実質Bのものとなります。そして長男Bが死亡するとこの信託は終わりにすると書いておきます。
家族信託契約には、通常、信託が終わると、受託者が預かっている財産を誰が取得するのかを記載することがほとんどです。信託が終わった場合、Cが預かっている財産を、孫Dが取得すると記載しておけば、最終的にDの財産とすることが可能です。

このように、利益を受ける権利の承継先を予め決めておく信託を、『受益者連続型信託』と言います。このタイプの信託契約では、遺言では実現できなかった『二次相続の指定』を実現することができます。

◯実際に有効活用できた事例

実際に受益者連続信託を活用した事例を紹介します。

ご相談者様(80歳男性)には長男と次男の2人のお子様がおり、2人とも結婚していますが、長男夫婦にお子様はいらっしゃいませんでした。またご相談者様は現在長男夫婦と同居しており、相談の対象財産は自宅とアパート1棟(収益物件)でした。

ご相談者様は同居している長男夫婦にとても世話になっているので、ずっとこの土地に住み続けてもらいたいのと同時に、アパートの家賃収入を渡したいと思っています。

しかし、自宅やアパートが建っている敷地は、ご相談者様が先祖代々受け継いできた土地で、「この土地は自分の家系で承継していきたい」というご相談者様の強い思いがあり、ここが一番の課題となりました。

自宅にずっと住んでもらい、かつ家賃収入をあげたいからという理由で、長男に財産を相続させてしまうと、もし長男が妻より先に死亡してしまった場合、妻がその財産を相続することとなり、長男の妻の家系に財産がいってしまうのは・・・と仰ってました。加えて、自宅やアパートは、子供がいない長男夫婦が亡くなった後は、最終的に次男の子(孫)に承継させていたいと考えていらっしゃいました。これでは、二次相続の指定ができない遺言では問題解決できませんね。

以上のご相談内容に「受益者連続信託」を活用してみるとどうなるでしょうか…

ご相談者様を委託者、将来財産を承継する予定の孫を受託者、ご相談者様を受益者として信託をします。ご相談者様が亡くなった後は受益権を長男に承継させ、長男が亡くなった後は、長男の妻に受益権を承継させ、長男の妻が亡くなった後は孫に受益権を承継させ、信託を終了させます。このような信託を設計することで、ご相談者様の思いである、ご長男様夫婦の生活を守りながら、先祖代々の土地を自分の家系で確実に承継することが可能になります。

こういったかたちで、ご相談者様の想いを実現することができます。もちろん家族信託が万能というわけではありません。ご自身やご家族の想いを実現するための1つの手段としてこういった方法があるということを知っておいていただければと思います。

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